土日は定期テスト対策を行っています。
明日、6月19日(日)も2時から校舎を開けますので、是非、テスト勉強に使ってください。
八王子の中学の3年生の国語の期末試験で、「呉音・漢音・唐音」が出題されるようです。
・呉音…奈良時代以前に伝えられた音読み。長江下流域の発音。仏典などに見られる。
・漢音…奈良時代から平安時代に伝えられた音読み。北方地方(隋唐 洛陽・長安)の発音。
・唐音…鎌倉から江戸にかけて伝えられた音読み。
気をつけなければならないのは、「唐の時代」(7~10世紀)に日本に伝えられたのは「漢音」であるということです。また、「宋・(元)・明・(清)の時代」に伝えられたのが「唐音」です。
つまり、「漢音」は「漢」が滅びた後に日本に伝わった音です。
そして、「唐音」は「唐」が滅びた後に伝わった音です。
「名称」と「伝えられた時代の中国王朝」が異なっていることに注意しましょう。
それぞれの音を比べてみましょう。
呉音 | 漢音 | 唐音 | ||||
行 | ギョウ | コウ | アン | |||
行列(ギョウレツ) | 行動(コウドウ) | 行脚(アンギャ) | ||||
京 | キョウ | ケイ | キン | |||
東京(トウキョウ) | 京阪(ケイハン) | 南京(ナンキン) | ||||
経 | キョウ | ケイ | キン | |||
経文(キョウモン) | 経営(ケイエイ) | 看経(カンキン) | ||||
明 | ミョウ | メイ | ミン | |||
明日(ミョウニチ) | 明白(メイハク) | 明国(ミンコク) | ||||
頭 | ズ | トウ | ジュウ | |||
頭上(ズジョウ) | 先頭(セントウ) | 饅頭(マンジュウ) | ||||
外 | ゲ | ガイ | ウイ | |||
外道(ゲドウ) | 外交(ガイコウ) | 外郎(ウイロウ) |
日本人は、「唐音」に非常に特異な印象を受けるでしょう。それは、歴史の中で中国語が激しく変化したからです。言語は、年月とともに変化していきます。
※「唐音の例」・・・扇子(センス)、杜撰(ズサン)、提灯(チョウチン)、胡散(ウサン)、椅子(イス)、箪笥(タンス)、普請(フシン)、瓶(ビン)、鈴(リン)。
中国語の発音は、時代や地域によって変化しています。日本に伝わった音が、いつ、どの地域から伝わったかによって、漢字の読み方が違っているのです。
少し乱暴な説明が許されるのであれば、「明」という字の中国語の発音が「ミョウ」→「メイ」→「ミン」という変化をしてきたのだということになります。そして、それぞれの発音が、順次日本にもたれされたわけです。
「明」という字は「現代中国語」の共通語(北京官語、普通語と呼ばれる)では「míng」と発音します。「míng」は、日本人の耳には「ミン」と聞こえます。
つまり、「明」という漢字を「ミン」と読む「唐音」は、「現代中国語」に最も近い音なのです。
一方、「ミョウ」という「呉音」は、古代中国語の発音を模写したものです。
言ってみれば日本人は、1000年以上前の中国語の発音を維持しているわけです。
もちろん、実際には、日本語の発音システムには存在しない要素(声調)があるので、正確な音を模倣しているわけではありませんが。
「唐」の時代より前の中国語の発音は失われています。古代中国語の「発音」は言語学における「謎」のひとつです。
面白いことに、古代の中国語の発音を再現するのに、日本語の音読みが「ヒント」になることがあるのだそうです。
言語は、文化の中心地から遠い場所に、古い形式が保存されることがあります。「呉音」や「漢音」は、その一例であるといえます。
中学3年生は、2学期に、学校で「魯迅」(ろじん)という中国の作家の作品、『故郷』を学習します。
その作品は、日野市の教科書(光村図書)では106ページ、八王子市の教科書(教育出版)では162ページに掲載されています。
「中国近代文学の偉大な父」である魯迅は、若いころに日本に留学していました。
日本で魯迅を驚かせたことのひとつが「漢字の発音」だったのだそうです。
中国ではすでに失われてしまった古い時代の中国語が、まだ、日本で「活きている」ということを知った魯迅は、大きな衝撃を受けたのでした。
何人かに「呉音・漢音・唐音」の説明のプリントを配りました。他にも欲しい人には差し上げるので声をかけてください。
(ivy 松村)