◎「平家物語」
・成立:鎌倉時代
・ジャンル:軍記物語
・琵琶法師による弾き語り(平曲)
・平家一門の繁栄と滅亡を描く
・仏教的「無常観」があらわれている
・七五調
◎扇の的
◆読解のポイント
※平家側が、扇を舟の端に立て、射落としてみよ、と挑発する
※大将の義経は、与一に命じて射させようとする
※与一は、一度は辞退するが、義経の命令を断ることができなかった
※与一のおかれた状況
・夕暮れを迎えた酉の刻(午後六時ごろ)…視界が悪い
・海へ馬で乗り入れて、馬上から扇を狙う
・扇までの距離は四十間(約72メートル)
・主人の義経の命令は絶対であって、辞退できない
・激しい北風のため、波が高い…扇が揺れ動く
・源氏と平家、両軍の観衆の注目の中で的を狙う
☆「いづれもいづれも晴れならずといふことぞなき。」→実に晴がましい(晴れ舞台)
・敵からも味方からも注目され、弓の腕前を見せるにはこれ以上ない場面であるということ。
※与一は、目を閉じて自分の故郷の神仏に祈る
・射損じれば、自ら死ぬ覚悟
・「自分をもう一度故郷に帰らせようと思われるならば、この矢を外させないでください」
☆「これを射損ずるものならば、弓切り折り自害して、人に二度面を向かふべからず。」
・個人の命よりも名誉を重んじる「武士の美意識」(義経の「弓流し」に共通する考え方)
※目を開けると、風が弱まり、扇が狙いやすくなった
※与一は矢を十分に引き絞って射る。
※与一の放った矢は、扇を射切った。
※与一の弓の腕前に感心した平家の男が、舞を舞った。
・「黒革をどしの鎧」の男は、与一の見事なわざに感動し、敵である与一をたたえる風流心をもった人物
※与一のところに、義経の使いがやってきて、「(義経の)命令である。射よ。」と言う。
※与一は、男を射倒す。
・与一は、自分をたたえている男を射殺したことになる
・義経の命令は絶対で、断ることはできない
※「ああ、よく射た。」(みごとだ)と言う者もいれば、「心にもないことを。」(ひどいことをするものだ)と言う者もいた。
◆表現のポイント
〇擬音語・擬態語
・よつぴいてひやうど放つ 「ひょう(ど)」(擬音語)
・ひいふつとぞ射切つたる 「ひいふっ(と)」(擬音語)
・ひやうふつと射て 「ひょうふっ(と)」(擬音語)
・海へさつとぞ散つたりける 「さっ(と)」(擬態語)
〇対句(対比表現)
沖には平家、船を一面に並べて見物す。
陸には源氏、くつばみを並べてこれを見る。
かぶらは海へ入りければ、
扇は空へぞ上りける。
沖には平家、船ばたをたたいて感じたり。
陸には源氏、えびらをたたいてどよめきけり。
平家の方には音もせず、
源氏の方にはまたえびらをたたいてどよめきけり。〔対比の表現〕
〇色彩の表現
「夕日のかかやいたるに、皆紅の扇の日出だしたるが、白波の上に漂ひ、浮きぬ沈みぬ揺られければ・・・」
・夕日→(赤)
・白波→白
・「皆紅の扇」→赤
・「日出だしたる」→金色
*与一が狙った扇は、赤い色で、真ん中が丸く金色に塗られている
◆歴史的仮名遣い
①にんぐわつ
②をりふし
③揺りすゑ漂へば
④につくわう
⑤願はくは
⑥向かふべからず
⑦この矢はづさせたまうな
⑧なつたりける
⑨よつぴいてひやうど
⑩こひやうといふぢやう
⑪みなぐれなゐ
⑫ごぢやうぞ
⑬よつぴいて
⑭しや頸
⑮ひやうふつと
⑯義経の弓といはば
⑰弓のやうならば
⑱わうじやくたる
⑲てうろうせんずる
⑳のたまへば
※答え
①にんがつ
②おりふし
③ゆりすえただよえば
④にっこう
⑤ねがわくは
⑥むこうべからず
⑦このやはずさせたもうな
⑧なったりける
⑨よっぴいてひょうど
⑩こひょうというじょう
⑪みなぐれない
⑫ごじょうぞ
⑬よっぴいて
⑭しゃくび
⑮ひょうふっと
⑯よしつねのゆみといわば
⑰ゆみのようならば
⑱おうじゃくたる
⑲ちょうろうせんずる
⑳のたまえば
(ivy 松村)