本日、卒業した高校生が顔を出してくれたそうなのですが、ちょうど不在にしていて話すことができなくて、残念でした。
元気そうな様子を伝え聞きましたが、もう少し「ハリ」のある生活に切りかえていきましょう。多分、もうすぐ学年末試験だと思います。
「理系の国公立大学」について少し。
東大や東工大はかなりの覚悟が必要ですね。筑波大、千葉大、横浜国立大もハードルが高いですよね。
それ以外の総合大学であれば、(都立大に名前が変わるそうですが)首都大、横浜市立大、埼玉大など。
それから、電気通信大、東京農工大、東京海洋大など。
あとは、東京医科歯科大。準大学(大学校)もあります。
「理系の教師」を考えるのであれば、学芸大も。
通学を考えると、電気通信大、東京農工大、首都大などがいいですよね。
文系も視野に入れるなら、学芸大の他、一橋大や東京外語大も近くて通いやすい。
都留文科大も通える距離ですね。
地方の国公立大学でも、「寮費」が月一万円以下の「格安」のところもけっこうあると思います。
広い視野で、いろいろな「可能性」を検討してみてください。
あっという間に大学受験がやってきます。
今のうちに調べたり確かめたりしましょう。
あと、「新テスト」になりますから、情報を集めたり、対策を練ったりするようにしましょう。
さて、都立高校入試が終わりました。
少し、所感などを書きたいと思います。
社会が難化しました。
「完全一致型」の設問や「完答型」の設問が増加しました。
さらに、「ヒント」が複雑化し、そのうえ受験者を惑わす「情報」が組み入れられているような設問がみられました。
選択肢を慎重に比較し、より「総合的」な思考力を働かせて正答を導くような問題に立ち向かわなければならなくなりました。
内容面では、アフリカ、南米、東南アジアなど、比較的なじみの薄い地域に焦点を当てる設問が増えています。
気になった問題をいくつか挙げてみます。
○大問2〔問2〕
W ペルー
X サウジアラビア
Y ノルウェー
Z モロッコ
「ア」を特定させるのは困難です。
「首都が内陸部」、「えびの養殖」という2つの情報が示されていますが、これだけの「ヒント」で、この選択肢を「X」のサウジアラビアに合致させるのは至難のわざです。
また、一般的な社会の教材では、「えびの養殖」は東南アジアのトピックとして出てくるので、戸惑った人も多かっただろうと思います。
「イ」も厄介です。
「東西方向に走る山脈」はアトラス山脈のことです。
「Y」はスカンディナビア山脈、「W」はアンデス山脈ですが、これらは南北に走る山脈です。全体の「ヒント」をうまく整理しないと、混乱するかもしれません。
また、「たこ」ですが、私はスペインなどに行ったことがあるので、あの辺りは「たこ」がよく獲れることを知っていますが、多くの中学生にはなじみがないかもしれません。
「ウ」は、「冬季においても凍らない湾」という表現のとらえ方に注意が必要でした。これを「暖かい地域」を示す「ヒント」であると捉えてしまうと、間違えてしまいます。
そして問題は、「エ」です。
「首都が乾燥帯」という記述から、反射的にこれを「X」のサウジアラビアに当てはめてしまった受験生が多くいたはずです。
ペルーは、アンデス山脈のイメージが強いので、「高山の気候」であると連想しがちですが、首都のリマは、乾燥帯の気候なのです。
一応、説明の後半には「山岳地域」というワードが出てきますが、他の選択肢にアトラス山脈、スカンディナビア山脈があるので、それほど有力な「ヒント」とはなりません。
ポイントは、「南から北へ流れる寒流」で、これによって、「エ」が南半球の国であることを特定します。
この設問は、かなりハードでした。
○大問3〔問2〕
W 東京
X 石川
Y 愛知
Z 京都
京浜工業地帯、中京工業地帯を擁する東京と愛知が、「ア」と「イ」になることがわかります。2都県は、製造業事業所数が多く、製造品出荷額が大きいはずです。
石川と京都を比較して、京都の方が産業的に発展していると考えられるので、「エ」が京都であると判断できます。
そして、「Ⅱ」の文章の「西陣織」「町屋」などのワードから、「京都」を特定します。
ただ、石川の金沢にも「町屋」があります。
さらに、「加賀友禅」と「西陣織」はちょっと混同しそうです。
ちなに、京都には、京セラ、任天堂、村田製作所といった世界的な機器メーカーの本社があります。また、京都大学、同志社大学、立命館大学をはじめ、多くの大学があります。
これも余談ですが、京都には、京都工芸繊維大学という名門国立大学があるのですが、よく知らない人は、それほど高いランクの大学だと思わず、ついあなどって恥をかいたりします。
○大問4〔問2〕
江戸初期、朱印船貿易の時代、山田長政という日本人が「タイ」の国王に仕えて活躍したという史実と、「タイ」の位置を知っておかなければならない問題でした。
社会は、得点を取り切れなかった受験生が多かったと思います。
社会は、昨年から明らかに作問の「方向」が変わりました。
数年前の「入試問題の『改善』」の影響で、記述問題の削減など、問題の「単純化」が進行していました。つまり、易化していたわけです。
そのため、特に自校作などの上位校では、得点率が「飽和」して、入試としての「選抜機能」を十分に果たすことができなくなっていました。
ちまたで「自校作を受けるなら、理社は90点以上!」などという「目安」が叫ばれたりしていますが、よくよく考えると、入試選抜としては好ましくないわけです。
私個人は、上位校は理社を独自作成(グループ作成)すればよいのに、と思いますが、まあ、現行の入試の「難易度の調整」がなされているとみてもいいのかもしれません。
それから、近年、ネットなどに「都立社会対策」の情報があふれるようになりました。
そういった「小賢しい手引き」に釘を刺すというような思惑もあるのかもしれません。
まあ、このブログも「牽引役」のひとつだったわけですが。
いずれにしろ、「安易な対策」が有効ではない入試問題が作られるのは非常に好ましいことだと思います。
最後に、ちょっとした付記を。
いずれ本年度の入試問題の「平均点」が公開されると思いますが、過年度の「平均点」と比べる際には注意しなければならない点があります。
もちろん、「平均点」は、問題の難易度によって上下します。
それだけでなく、「採点」の影響を受けます。
過去に、「採点」に多くの「誤り」が見つかったことがありました。また、採点基準が見直されたことがありました。
そうした「事態」は、「得点」を変質させています。つまり、例年の「平均点」と「同質」ではなくなっているわけです。
それから、母集団の学力が「平均点」を左右します。
最近の2年、都立高校の受験者数が減っていますが、特に、学力下位層が都立高校を受けなくなっています。
実は、「授業料軽減制度」を頼りに私立に進学する生徒は、あまり上位ランクではない私立高校に多いのです。
ちょっと気をつけたいことですが、これには、私立と都立の「学費」はあまり変わらなくなった、という「誤解」も働いています。
で、最近の都立高校の入試では、学力下位層が「抜ける」ために、どのくらい影響があるのかちょっとよくわかりませんが、ともかく「平均点」が上昇してしまうわけです。
「平均点」は、単純に「難易度」を示すというわけではないのです。
(ivy 松村)