立川高校は、ホームページでかなり興味深いデータを公表しています。
毎年の「進路決定者数」です。
今年のデータを見てみましょう。
平成27年度3月卒業生の進路決定者・進路決定率
男子 | 女子 | 合計 | ||||||
卒業者数 | 170 | 150 | 320 | |||||
国公立大 | 47 | (27.6%) | 34 | (24.7%) | 81 | (25.3%) | ||
私立大 | 42 | (22.7%) | 78 | (52.0%) | 120 | (37.5%) | ||
専門等 | 0 | 1 | (0.7%) | 1 | (0.3%) | |||
予備校等 | 81 | (47.6%) | 37 | (24.7%) | 118 | (36.9%) |
今年立川高校を卒業した生徒のうち、国公立大学へ進学したのは男子47名、女子34名です。その合計は81名です。これは、卒業者数320名のうち、男女計25.3パーセントに当たります。
つまり、4分の1の生徒が、現役で国公立大学に進学したのだということになります。
国公立大学の進学率は、その前の年度が、近年で最も低い数値になっていましたので、昨年度は低迷を脱した年になりました。
ここ数年の立川高校の国公立大学の進学率は、20パーセント前後から25パーセントとなっています。
「ざっくり」とまとめれば、立川高校の生徒は、2割強の「確率」で国公立大学に進学する「可能性」を手にするということになります。
私立大学への進学者は、男子42名、女子78名で、合計120名となっています。
男女計37.5パーセントが私立大学に進学します。
「予備校等」は男子81名、女子37名で、合計118名となっています。男女計36.9パーセントです。
「ざっくり」と、3分の1の生徒が現役では大学に進学しないということになります。
男子に限れば、47.6パーセントが「予備校等」であり、逆にいえば、現役での大学進学率は5割強であるということになります。
この数値は非常に興味深く思います。もちろん、進学・就職等の意思がない卒業生もこれに含まれていると思われますが、その多くは大学進学を希望して「浪人」という選択をしていることが推察されます。
立川高校は、一部の関係者のなかで、ある意味で、「浪人」に「積極的」な生徒が多い高校であるという見方があります。
現役での大学進学にこだわらないタイプの生徒が集まってくるような「校風」とでもいえるでしょうか。それは、立川高校の「伝統」と無関係ではないのかもしれません。私立の桐朋高校にも似たようなところがあります。
最近は、都立のトップグループの高校群は、相応の大学合格実績を上げることが求められていますので、先生方の指導にも熱が入っていらっしゃると感じます。
であるにもかかわらず、というべきなのか、あるいは、そのために、というべきなのか、わかりませんが、いずれにしても、浪人も辞さない受験に挑むような生徒が、あるいは、浪人を覚悟して高校生活をおくるような生徒が、一定数いるのでしょう。
では、浪人して国公立大学に進学する生徒はどれくらいになるのでしょう。
立川高校が公表している「合格状況」によれば、昨年度の「既卒」=浪人生の国公立大学の合格者は53名となっています。
立川高校の一昨年度の「予備校等」の数は、近年では最も多く、男女計132名となっています。
「ざっくり」と考えて、132名のうち53名が国公立大学に進学するとなると、浪人生の約4割が国公立大学に合格するという計算になります。
もちろん、これは、過年度の卒業生の合格者の数ですから、必ずしも全員が合格した大学に進学するとは限りません。しかし、一般的に考えて、浪人生が国公立大学を受験し、合格を手にして、進学を辞退することは考えにくいことですので、およそ、進学者数と一致する数であると推定することができると思います。
また、「既卒」には、いわゆる「二浪」以上の学生が含まれます。
一方で、大学受験から「フェードアウト」していく卒業生もいるだろうことを考慮すれば、浪人生全体の数は、その年度の「予備校等」の人数より少し多いくらいの数字に収束するのではないかと思います。
細かい数字を気にせず、「ざっくり」と、立川高校の進学状況を見わたしてみると、学年の約25パーセントが現役で、また、15パーセントほどが浪人をして国公立大学に進学します。
学年全体では、最終的に、約40パーセントが国公立大学に進学すると推測することができると思います。
難関私立大学の合格実績も加えてみましょう。
「サンデー毎日」6月28日号や「週刊朝日」6月26日号に、「有名・難関大学」への「現役進学者数」が掲載されています。
このデータは、「株式会社大学通信」が行った調査によるもので、週刊誌が独自に調べたものではありません。これだけの取材を行う労力は、並大抵のものではないと思います。
いくつかの数値が、高校が公表しているものとずれていることが確認できます。
しかし、「ざっくり」とした概況を把握するためには、比類なき資料であると考えます。
週刊誌のデータによれば、昨年度の、立川高校の「早慶上理」(早稲田大・慶應大・上智大・東京理科大)への「現役進学者数」は、合計32名です。
立川高校が発表している資料によれば、現役での「早慶上理」の合格者数は88名ですから、合格者数のうちの約36パーセントがこれらの大学群に進学したという計算になります。
また、「MARCH」(明治大・青山学院大・立教大・中央大・法政大)への「現役進学者数」は46名です。
立川高校が発表している資料によれば、現役での「MARCH」の合格者数は210名ですから、合格者数のうち約22パーセントが「MARCH」に進学したという計算になります。
整理してみます。
立川高校の現役での国公立大学の進学者は81名です。
「早慶上理」への進学者は32名です。その合計は113名です。
したがって、昨年度の卒業生の約35パーセントが、国公立大学か「早慶上理」へ現役で進学したことになります。
また、「MARCH」への進学者は46名です。
上記の人数にこれを加算すると、その合計は159名になります。
したがって、昨年度の卒業生の約50パーセントが国公立大学か「早慶上理」+「MARCH」に進学したことになります。
そのうえ、ICUや学習院といった名門私立大学への進学者も含めると、「進学実績」の数値はさらに上昇します。
立川高校の生徒は、5割以上が「MARCH」以上の大学に進学する「可能性」を手にする、と考えると、これもまた興味深いデータです。
逆にいえば、現役で私立大学に進学した120名のうちの3割ほどは、これら「以外」の大学に、現役で進学したのだということになります。
さて、これまでにも何度も述べてきたことですが、立川高校という「ブランド」をまとったからといって、「その先」が約束されているわけではありません。
入学して、その3年後には、「序列」がくっきりとあらわれてしまうわけです。
入学を「目標」にしてしまっては、「その先」がしりすぼみになってしまいます。
「進学校」に通う「メリット」のなかでもっとも価値があるのは、実は、「高水準」の教育を受けることができるというものではありません。
本当の「財産」となるのは、周りの友人たちなのです。
自分がまったく歯が立たない問題を解くライバルがいる、驚愕するほどの知識を持ったライバルがいる、たった数分間で課題を終わらせてしまうライバルがいる・・・そういう「環境」が重要なのです。
ここに記しているのは、そんなライバルたちが「何パーセント」いる!ということなのです。
立川高校を受けようと思っている中学生は、彼らと張り合えるだけの力をつけて入学しようと思わなければダメなのです。
高校入試をどのように乗り越えていったのか、という「経験」は、非常に重要です。ですから、都立入試だけを対象に、「省エネ」の受験勉強をすればよいという安易な考えに反対なのです。
そして、立川高校に合格した生徒は、彼らに食らいついていくだけの意志を持たなければダメです。
せっかく「そこ」にいるのに、そういう「環境」を無視してしまったり軽んじてしまったりすれば、自分が成長していくことができなくなります。
(はっきりいって、都立トップ校の生徒であっても、相応の大学を受験するのであれば、塾や予備校に通う必要があります。もちろん、素晴らしい先生方がいらっしゃることをうかがい知っています。でも、「指導」への期待ではなく、「環境」への期待を大きく持ってほしいと思います。)
「入学者」に無条件で「可能性」がプレゼントされるわけではありません。
「可能性」は結局、「皮算用」です。
「可能性」ではなく、「実力」を手にするために、努力しなければなりません。
そのために、ハイレベルな高校に入るのです。
(ivy 松村)