暗記のコツはいくつかありますが、そのうちのひとつは、情報を圧縮する、ということです。
「圧縮」させた情報は、運用するときに「展開」させる必要があります。
ですから、それを導く「規則」にしたがって「圧縮」を行わなければなりません。
つまり、記憶する際に、覚えることがらのボリュームをなるべく小さくすることが、暗記をするうえで有効であるということです。
そのためには、「規則」を意識しなければなりません。
「規則」を意識しながら暗記するやりかたについて考えてみましょう。
単語を記憶するのに使用する「脳の領域」というものがあると仮定して考えてみます。暗記をするとき、つまり単語をその領域に収納する場合、「1単語」ごとに「1メモリ」が占有されるとイメージしてください。
このような認識は、正しいとはいえません。
しかし、あえて物理的な発想で「暗記」について考えてみましょう。
もし、数字を「1単位」ごとに記憶していかなければいけないとすれば、たとえば、1から1000までの数字を覚えるのに、「1000メモリ」を使うことになります。
つまり、「数字の数」=「使用メモリ」となるのです。
そうすると、私たちは数字を扱うために、膨大は量の「メモリ」を消費しなければなりません。
やがて「記憶の領域」は数字だけでいっぱいになってしまうでしょう。
私たちの文明は、「10進法」を使用しています。
ですから、数字が「10」に到達した後は、「折り返し」を行って、「10+1」=「11」と表示し、「10×10」に到達した後は「101」という表示を使います。
このように、数字を「折りたたむ」ことで、全ての数を記憶しなくても数字を使いこなすことができます。
たとえば、「894」という数字は、「8」という概念、「100」という概念、「9」という概念、「10」という概念、「4」という概念を組み合わせて構成されています。
私たちは、894もの「メモリ」を使って「894」を認識しているわけではありません。
894個分の「メモリ」を使用しなくても、「894」を認識できるはずです。
私たちが扱える数字の「量」に対する「メモリ」の消費量は、恐ろしいほどに少量です。
さらに「1000」という概念をたったひとつ導入するだけで、10倍以上のもっと大きな数をも扱うことができるようになります。
こうして、桁が大きくなるほど「費用対効果」が高まるのです。
私たちが数字を認識できるのは、必要とされる数字のすべてを記憶しているからではなくて、数を運用する「規則」を身につけているからです。
その「規則」と、「10進法」に必要な最低限の概念さえ覚えれば、膨大な数字全体を記憶しなくても、数字を使いこなすことができます。
同じように、あらゆる学習における「暗記」を「規則」に則って行うことで、「メモリ」を節約しながら、大量の情報を記憶することができるようになります。
およそものごとには「規則」があります。
そして、しばしば「例外」があります。
「暗記」にとって大事なのは、「規則」と「例外」を整理しながら覚えることです。
「英語の数字」を覚えることは、暗記の練習にとても良いと思います。
「数字」の配列には、明示的な「規則」があらわれるので、「規則」を考えながら暗記をする練習の、初歩的な段階として理想的です。
「one」「two」「three」「four」「five」「six」「seven」「eight」「nine」「ten」
1~10をベースにして、その先を覚えていきます。
ただアルファベットの文字列を記憶するのではなく、子音の発音や二重母音の「規則」を覚えます。
さらに、黙字や不規則な発音といった「例外」があらわれている部分を確認し、覚えるようにします。
11~20には、高度な「規則」と重要な「例外」があらわれます。
それらを意識し、整理しながら暗記することは、使用する「メモリ」を節約するのに有効であるだけでなく、記憶を定着させるのに効果的です。
「eleven」と「twelve」は「例外」です。
「thirteen」「fourteen」「fifteen」「sixteen」「seventeen」「eighteen」「nineteen」
13以降は、「-teen」をつける、という「規則」を見出すことができます。
ただし、「thirteen」「fifteen」「eighteen」には「例外」がみられます。
「thirteen」は特に念入りに覚える必要があります。
「-ir-」の部分を、刷り込むようにして脳に定着させる必要があります。
「fifteen」「eighteen」は、綴りの変化を確認します。
「フィフティーン」「エイティーン」という発音と対応させて覚えます。
「fourteen」「sixteen」「seventeen」「nineteen」は、「規則」にしたがって覚えます。
「twenty」以後、「-ty」によって10の位をあらわすという「規則」を確認します。
「2」という概念と「tw-」が関連しているということを確認します。
(後に「twice」という単語が出てきたときに、関連づけて覚えるようにします。
「two」(トゥー)から、「ウー」という音と「o」の対応を知ることができます。
「twelve」(トゥウェルヴ)、「twenty」(トゥウェンティ)はともに「twe-」で始まることを確認します。
20以降は、「twenty-one」「twenty-two」「twenty-three」・・・と数えていきますので、あとは、「十の位」を覚えればよいことになります。
「thirty」「forty」「fifty」「sixty」「seventy」「eighty」「ninety」「hundred」
「forty」のつづりが変化しているので、入念に覚えます。
「thirty」「fifty」「eighty」は「thirteen」「fifteen」「eighteen」に対応しています。
「sixty」「seventy」「ninety」はそのまま「規則」にのっとって暗記します。
100以降は、「one hundred」「two hundred」「three hundred」・・・となります。
894は、「eight hundred ninety-four」となります。
このように、「数字」を、「規則」と「例外」を整理しながら覚えることで、応用的に、「894」のような大きな数も自動的に扱えるようになります。
100以降の「数字」をいちいち覚える必要はありません。
「10進法」という「規則」を念頭に「英語の数字」の暗記を行うことは、暗記の基本を身につけるのにうってつけです。
多くの言語、文化の中で、「数字」は、効率的に設計されなければならない「規則」です。
その中に、「例外」がちりばめられています。
ヨーロッパのいくつかの言語には、古代の「12進法」の名残がみられ、英語にもその面影があります。それが、面倒な「例外」のひとつを形作っています。しかし、それもまた、「暗記の練習」のよい材料となるでしょう。
多くの場合、人の創作物には、故意あるいは不意の「例外」が存在しています。
むしろ完璧に「規則」通りに何かが作られることのほうが希少であるといえるでしょう。
どんな「規則」の中にも「例外」は潜んでいると心得ておかなければなりません。
英語には、あきれるほど多くの、つづりと発音の不一致がみられます。
また、今後、みなさんは、幾度となく 文法上の「例外」に遭遇することになるでしょう。
今、「英語の数字」と格闘している生徒のみなさん、絶対に、「労働作業」のように暗記をしないでください。
暗記をするときには、必ず、頭を働かせてください。
考えながら暗記をするくせを身につけてください。
常に「規則」と「例外」を意識しながら取り組むことが大切です。
(ivy松村)