昨日、「中学」の「地学」の先生からメールを頂戴しました。
その中で、先日私が書いた「都立高校入試の理科の『出題ミス』について」というブログの記事のなかにある誤りを指摘いただきました。
まず、私は、「図1」が「正しくない」と書いていましたが、「出題ミス」として問題視されているのは「図3」の選択肢の「イ」の位置でした。
私は「図3」の「イ」の「位置」を基準にして考えてしまいました。そのため、「図1」の金星は正しく描かれていないのだと思ってしまいました。
また、教科書によれば、金星の見え方が「図2」のようになるのは「イ」以外にない、と書きましたが、「図2」の金星の形は、「ア」の可能性を捨てきれるものではありません。
したがって、そこには「図2」によって「ウ」の選択肢を「完全に消去できる」と書くべきでした。
メールでは、非常にていねいな指摘と解説をしていただきました。
また、この件で、大変な思いをされている方々がいるということをおっしゃっていました。
当該の記事の細部で、私が思い違いをしていたり、おかしな表現を使っていたりした部分があったようです。申しわけありませんでした。
指摘を受けた部分を含めて整理してみると、「出題ミス」であるとされている都立高校入試の理科の大問3の〔問1〕は、以下のような「解答の筋道」で構成されていることになります。
①「図2」の情報によって、解答を「ア」と「イ」にしぼる
②「図1」の情報によって、「イ」が正答であると特定する
つまり、選択肢「ウ」にまつわる「補助線」をどのように引こうと、正答を導くうえで「一切関係がない」ということがわかりますね。
記事の中で、私はいくつかの点で誤った内容を書いていますが、それは論旨に影響を与えるものではなかったので、私の主張は変わりません。
結局、「ウ」は中学で学習する理科の知識をもとに「消去」されるべき選択肢です。
ですから、「ウ」を正解とするべきではないのです。
多くの方が「非難の声」をあげていますが、「ウ」を選んでしまった受験生は、学力が足りなかったために誤った解答をしてしまったわけです。
それを「救済」するべきである、という主張は「論理的」ではないと思います。
「作問」が不用意であったというのなら、それはそうなのでしょうが、当該の設問は入試問題として「成立している」とみなすほかはありません。
いくつか、理解できたことがあります。
それは、状況から推測できるということであって、実際のことはわからないままなのですが、ちょっと考えたことを書こうと思います。
きっと、東京都教育委員会の「対応」に腹を立てている都立高校の先生方がいらっしゃるのだろうと思います。
「入試」に関して異議を申し立てないように、というような「圧力」のようなものがあったのかもしれません。
あるいは、異議を取り合わないというような態度を示しているのかもしれません。
東京都教育委員会は、今回の件について、外部の識者や塾の人間の抗議はあるが、教員からはない、と述べているそうです。
もしかすると、教員の声を受け付けていないだけなのかもしれません。
新聞紙上で「出題ミス」が取り上げられてから、この問題は大きくクローズアップされることになりました。これは「リーク」なのだろうと思います。
また、塾関係者をはじめ、いろいろな方がネット上でさかんに意見を述べています。
おそらく、自分で声を上げられない人たちが、情報提供をしたり、外部の人間を「けしかけ」たり「たきつけ」たりしているのだろうと思います。
一方、東京都教育委員会の側では、今年の入試は「つつがなく」終えなければならないという事情がありました。
この数年、都立高校入試に関する「不祥事」が続いていました。
都教委からすれば、一昨年に発覚した「採点ミス問題」は、現場の高校の教員が引き起こしたものです。都教委の職員の方々は、その対応に忙殺されたことでしょう。
監督する立場として「多少強引なやり方でことを収めるのもしかたがない」という考えにとりつかれていたということも考えられます。
今回の「出題ミス」の騒ぎは、「感情的なもつれ」が大きく作用していると思います。
私は、多くの方に、この問題を「理性的」に考えてほしいと思っています。
東京都教育委員会を「追いつめる」ことで、一体何を得ようとしているのでしょう。
再三指摘しているとおり、「ウ」を選んだ受験生は学力が不足していたのです。「ウ」を選んだ受験生に得点を与える根拠はありません。
これは、「悪」を懲らしめるストーリーなのでしょうか。
情緒的な扇動には、説得力はありません。
私は、東京都教育委員会の職員の方々もまた、「被害者」であると考えています。
そして、私は、さまざまな抑圧のなかで、「都立復権」の灯を絶やすまいと暗闘されている方々がいらっしゃると信じています。
「想像力」は大事なものだ、とよくいわれます。
「想像力」とは、「直接知覚できない現実の局面を、理知的に把握する能力」のことをいいます。
「騒ぎ」を拡大させて、今年の理科の入試問題を「出題ミス」であると認めさせることに「成功」したとしましょう。果たして何が起こるのかを「想像」していただきたいと思うのです。
必ず、次年度以降の入試問題の「質」が低下します。
思考力を問うような、作りこまれた問題が少なくなり、誰からも「クレーム」を付けられることのない「のっぺりとした」設問が並べられることになるはずです。「幸い」マークシートが稼働しています。
もう一度都立高校を「凋落させよう」という「流れ」を、押しとどめることができなくなっていくでしょう。
たった2年で、「あそこまで」都立高校の入試選抜はスポイルされてしまいました。
「この件」は、一歩まちがうと「ダメ押し」になる可能性が高かったのです。
無責任な「足の引っ張り」が続けば、再び「日比谷潰し」が成し遂げられ、都立高校の「凋落」が「決定的」になります。
(ivy 松村)
中学校現場で理科を教えているものです
ヤフーでヒットしたので読ませていただきました
金星の満ち欠けに関しては空間的な位置の把握と
球に投影される太陽光と影の関係をいかにわかりやすく理解させるか
ということで教材研究をし授業で取り上げています
その説明ではもちろん補助線を使います
このページの前の見解で図2からイの金星が正答だとすぐわかると
ウと答えることは全く分かっていない生徒が答えることだと
この問題を考えるのに補助線を引くことは取り扱っていないと
のべられていますが
図1やこの後の問題に関する詳しい記述はどうなるのでしょうか
もっと手順(補助線などをひいて)をふみなさいと
示しているような問題構成だと感じます
私見ですが
もともとこの問題の図2は、もっと半月に近いちょっと膨れた形の
金星であったのではと推理します
そうすれば正答は、図2からイかウの判断となり
図3に補助線を引き、図1の位置関係から
ウと判断する問題であったのではないかと思うのですが
そうすれば、金星の形に関する知識と
設定された図から位置を類推する
良問になっていたのではと思っています
だからこそこの問題がこのままになると
今後、この種の天文の入試問題作成は教科書の図を暗記するだけの
平板な問題だけになっていくのではないかと恐れています
意見を述べさせてもらいました
一時、コメントが書き込めなくなってしまっていたので、新しいブログの記事の中に返信を書き込みました。そのために、ご意見と、私の返信が別々になってしまいました。
申し訳ありませんでした。
高校の地学の教師です(都立ではありません)。
金星の問題に関する記述を読ませていただきました。
私の考え方とは異なっている点があるので申し上げます。
どちらが正しいと言うことではないかもしれませんが,ご一読いただけたら幸いです。
>「出題ミス」として問題視されているのは「図3」の選択肢の「イ」の位置でした。
ということですが,はたしてそうでしょうか?
出題ミスとして問題視されているのは,図2の金星の形だと思います。
この問題はすべてきちんとした日付が書かれているので,図1の金星の位置も,
次のページにある記述なども含めてすべての記述が,金星の位置はウであることを
示しています。
にもかかわらず,図2の金星の形を丸く描いて答えをイにもっていこうとしたことが
出題ミスになったということです。
つまり本来の答えがウであるのに,無理矢理イに持って行こうとして,図2を正しい形
よりも少し丸く描いてしまったため,正答が2つある状況になったわけです。
(図1から考えるとウ,図2から考えるとイ ということになります)
ところで,
>①「図2」の情報によって、解答を「ア」と「イ」にしぼる
>②「図1」の情報によって、「イ」が正答であると特定する
ということですが,たしかにこの問題の作者はそのように考えて
問題をつくったとは思います。
ただ,①の図2の情報によって本当に解答がアとイにしぼれるでしょうか。
ウの位置でも半月型からやや丸くなって見えますので,
ウの可能性も捨てきれません。
(都の担当者にたしかめたところ,やはりかんちがいしていて,
ウの位置では半月型に見えると思っていました。
半月型になるのはエの位置です。)
したがって,ウの位置でも半月型より丸く見えることを知っている受験生は,
①「図2」の情報によって、解答を「ア」と「イ」と「ウ」にしぼる
②「図1」の情報によって、「ウ」が正答であると特定する
という流れになります。
図1では火星と月のちょうど真ん中あたりに金星が描かれているので,
図3で位置を検討すると,「ウ」しかありえません。
また,背景に描かれている星座から火星と月が約50~60°離れており,
(黄道12星座2つ分ですから)金星と火星は25~30°ほど離れていることになり,
そこから考えても,ウの位置になり,イの位置はありえません。
黄道12星座は教科書にもありますし,1つ分の角度が30°になることは,
賢い中学3年生ならわかることだと思います。
ですので,
>つまり、選択肢「ウ」にまつわる「補助線」をどのように引こうと、正答を導くうえで「一切関>係がない」ということがわかりますね。
はちがっていると思います。
つまり,
>「ウ」を選んでしまった受験生は、学力が足りなかったために誤った解答をしてしまったわけです。
とはならず,
①で図2を検討した際に「ウ」だと半月型に見えるからありえないと
かんちがいした学力不足の受験生は迷わず「イ」と解答したけれど,
①で「ウ」を捨てきれず,図1から考えて「ウ」が正答だと思った賢い受験生は
×をもらってしまったという事態になっていると思います。
たしかに「ウ」を選んだ者の中にはあてずっぽうで感覚的に解いた者がいるのかもしれませんが,
それを言うなら「イ」を選んだ者の中にもあてずっぽうであたった者もいるでしょう。
選択肢式なのだからそれは当たり前のことです。
したがって,この問題の正答はイとウの両方であるべきだと思っています。
なお,私は別に都を追い詰めようとか,都立高校を凋落させようとか思っているわけではなく,
単純に,まちがった考え方にもとづいた作問や採点が行われていることを憂慮しているだけです。
また,出題ミスであることを認めさせることは,問題の質の低下に直結しません。
なぜならば,別に何があっても作問する際にはミスを防ぐための努力をするのが当然だからです。
ミスをミスと認め,次はミスのないいい問題を作ろうと思ってもらわないと困ります。
むしろミスを認めないのであれば,かんちがいしたままで,よりよい体制をつくったり努力
したりすることがないでしょうから,改善できないことになります。
それに,質を低下させてミスを防ぐならばそれはそれだけの資質しかないことになります。
もしもそうなるなら,それはもともと作問能力がなかったことを露呈することになります。
今回のように思考力を問う問題が作られていることは評価できると思います。
しかし,それはあくまで高い見識のもとにつくられるべきであって,今回は作問者が
中途半端な知識や考え方でつくってしまったことが問題だっただけです。
また,この問題を放置すると,これを見て勉強する次の世代の受験生や,彼らを教える立場の
人々がかんちがいしてしまうことになります。
私は日本の理科の将来のことを考えて,この事態を正しい方向に導きたいと思います。
長文失礼いたしました。
一時的に、コメントに対する返信が書き込めなくなっていました。
それで、新しいブログの記事の中に返信を書き込みました。
大変見づらいやり取りになってしまって申し訳ありません。
都立入試の一連の件で検索してたところ、こちらのブログにたどりつきましたので、コメントさせていただきます。
金星の満ち欠けについて教科書や参考書をしらべていただいたんですね。
なるほど。というか、たしかに図2から判断するに「イ」ですね。これは満場一致でしょう。
そして、図1の月・火星・金星の位置についてですが、こちらについては、ブログ主さまと違い
「イ」の可能性も「ウ」の可能性も否定できないように感じます。
そもそもこの件について考えると、
①中学生は補助線まで引いて考えない
②補助線を引いて考えるのが普通だ
という2つの意見に2分されているように思います。
私は別の塾で理科を専門に指導させていただいておりますが、
「天体は補助線が命」と生徒に指導していましたので、②の立場です。
ですから、高度なども考慮すると「ウ」かなあと判断しました。
個人的には補助線を引くのは常識と考えていましたが、いろいろな方の意見を
聞くと必ずしてもそうではないことに気づかされました。
このあたりが中学校現場と塾側とのかい離なのかなと思いますが、
仮に中学校では補助線の説明を一切していないのであれば、私ども塾側の落ち度に
なります。
ただ、金星の満ち欠けなどを考える際にどうやって指導するのかも気になります。
また、公立の都道府県入試や中学入試でも同様の問題が何度も出題されており、
それらの多くでは補助線を引かないと答えられない問題ばかりでした。
ポイントをわかりやすく整理していただきました。
私も塾の人間ですから、塾と学校での教え方の違いについて考えることが多々あります。
塾講師として中学生を指導しているものです。
イとウも正解とするか、この問題を無い事にするかがよいと考える者です。
月と太陽を結ぶ線と月と地球を結ぶ線の成す角は110度(図3)
ですので、月は(最大部で)直径の33%程度は見えているはずです。
ところが図1では11%程度が見えている月が描かれています。
この事から満ち欠けの表現精度として次のことが言えます。
「満ち欠けの図の精度は直径の 1/2 を超えるか超えないかは表現
しているが、直径の 1/4 あるいは 3/4 を超えるか否かまでは
表現していない」
この考えで図2を見て得られる情報
「欠けの最大部で、半径の1/2は欠けていない」です。
従って図2があるからと言って、ウを排除できません。
さらに、火星を見た方向と金星を見た方向が成す角度を a とし、
火星を見た方向と月を見た方向が成す角度を bとすると、a/b は
図1 41%
図3のイ 17%
図3のウ 46%
となり、ウのほうがより近い値になり、むしろイが排除されます。
下記もご参照いただけると幸いです
http://kartec.mods.jp/Astro/Astro.htm
もしかすると、私が使った「精密性」という言葉に影響されているのかもしれません。
両者の序列を決定するうえで、どちらがより精密であるかは関係ありません。
現在は、3/21の「平成28年度都立高校入試の理科の大問3〔問1〕の説明」という投稿で反論を承っています。
ご意見がございましたら、そちらにお書きください。