都立高校の応募倍率で、やはり気になるのが立川の男子です。
昨年の応募倍率「2.10」から、大きく下がり、本年度は「1.50」となっています。
昨年の応募人数は279人でした。
本年度は199人ですので、昨年と比べて「-80」となっています。
実は、立川高校は2年前に大学合格実績が若干低迷しました。
(ちょっと気になって調べてみたのですが、もしかしたら、「授業時間の変更」が原因のひとつだったのかもしれません。昨年度は回復しています。)
本来なら、進学校の大学合格実績の伸び悩みは、次年度の応募に影響します。
しかし、昨年度、立川の男子の応募倍率は、2倍を超え、近年で最も高い数値となりました。
一昨年度と昨年度に立川高校の男子の倍率が大きく上昇した理由については、昨年度の「志願傾向分析」で言及しています。
近接する国分寺高校が一足早く特別選考を廃止したために、地域内で、内申点にとらわれない受験が可能な高校が、立川と国高のみになったことがおもな原因であると考えられます。
従来、国分寺は男子の応募が多い高校でした。
その国分寺が特別選考を廃止したことで、得点力で勝負したいと考える男子の受験生の「需要」が立川に集中した結果、高倍率の受験となったのです。
受験倍率は二つの要因によって規定されていると考えることができます。
それは、「内部的要因」と「外部的要因」です。
大学合格実績などの、高校が持つ「魅力」や「価値」は「内部的要因」ととらえることができます。
一方、入試全体のシステムや制度、「他校の動向や事情」は「外部的要因」とみなすことができます。
ある高校の「内部的要因」が減退することになっても、相対的に「外部的要因」にアドバンテージがあれば、応募の「相場」は下落することなく維持されるでしょう。
逆に、「内部的要因」が充実していても、「外部的要因」が作用して、受験生が集まらないということもあり得ます。
立川高校の場合、一昨年の大学合格実績は振るわなかったわけですから、昨年度の「内部的要因」の「スタッツ」は低下していたわけです。しかし、他校に比べて受験制度の面で大きな訴求力があったために、応募にかげりがさすことなく、倍率が上昇したのだと考えることができます。
一方、本年度、すべての都立高校の入試で特別選考が廃止され、内申点の換算方法が変更されました。
これは、「外部的要因」の変化です。立川高校は、本年度は、昨年度の高倍率のインパクトや、入試制度の変更が大きく作用して、受験生の応募人数を減少させています。
本年度はすべての都立高校で特別選考が廃止されたために、各高校の「条件」は横並びになってしまいました。
立川の「男子」は特に、特別選考という制度と「校風」がマッチしていたために、これまではこの制度を有することが非常に大きな「強み」となっていました。
今回の倍率の「下落」は、その反動であるとみることもできます。
やはり、特別選考の廃止は本年度の都立高校入試に大きな影を落としていると思います。
(町田高校の男子の倍率の低下も、同じように特別選考の廃止が影響しているのかもしれません。)
さらに、内申点の算出方法が変わり、合否のボーダーが読みづらくなっているために、「安全志向」の出願が多くなっているのだと思います。
地域的、学力的に募集の対象となる生徒が重なる立川高校と八王子東高校は、比較して語られることが多いのですが、近年、立川は八王子東を「逆転」しているとみなされていました。
しかし、本年度の動向からすると、立川と八王子東の序列に再度変化が起こりそうな気がします。
また、国分寺高校の応募が「回復」してきたことで、周辺の上位校の倍率が若干下がっているように思います。
(多摩地域の都立高校の階層性に着目して志願傾向をみると、さらに「流れ」が見えてきます。)
(ivy 松村)