夏期講習に入って、中3は、集中的に古文に取り組んでいます。
高校受験の古文は、高度な文法知識よりも、読解力が重要です。
意味や文脈を類推したり、内容を大まかに把握したりする技術や能力が求められます。
しかし、むしろそのために、助動詞について、ある程度の文法的な知識が必要になります。
特に注意しなければならないのは「ぬ」の識別です。
これは、多くの人が一度は勘違いをする部分にちがいありません。
古文に出てくる「ぬ」にはおもに2つの用法があります。
①「打消」の助動詞「ず」の連体形である「ぬ」 (~ない)
②「完了」の助動詞「ぬ」の終止形である「ぬ」 (~た・~してしまった)
それぞれの例文を見てみましょう。
① 雨降らぬ日。 (雨が降らない日。)
② 雨降りぬ。 (雨が降った。)
それぞれの接続の形を確認しておきましょう。
①の「打消」の「ぬ」には未然形が接続します。ですから、「降る」は「降ら」と活用しています。
②の「完了」の「ぬ」には連用形が接続します。ですから、「降る」は「降り」と活用しています。
②の解釈を間違えないようにしてください。終止形の「ぬ」は「完了」の意味です。
「ぬ」は、映画のタイトルなどでもおなじみですが、勘違いしている人もいます。
「風立ちぬ」 (風が立った)
「風と共に去りぬ」 (風と共に去ってしまった)
もちろん、それぞれ「完了」の意味で使われています。
さて、2学期以降の予習です。
光村図書の3年の教科書を確認してみましょう。
・63ページ(俳句):
プラタナス 夜もみどりなる 夏は来ぬ 石田波郷
「夏は来た」という意味ですね。
・143ページ(和歌、万葉集):
東の 野に炎の 立つ見えて かへりみすれば 月傾きぬ 柿本人麻呂
「月は傾いている」という現代語訳が付けられていますが、「ぬ」は「完了」の意味を持つ助動詞であることに留意してください。すでに月は「傾いた」状態にあるのです。
・146ページ(和歌、古今和歌集):
秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる 藤原敏行
初句は「秋が来た」となります。
(この歌は、後日もう少し詳しい文法的説明をします。)
・154ページ(『奥の細道』):
「国破れて山河あり、城春にして草青みたり」と笠打ち敷きて、時のうつるまで涙を落としはべりぬ。
「はべる」は「です」「ます」などに相当する敬語です。文末は、「涙を落としました」という意味になります。
ついでに、2年の教科書も見てみましょう。
・61ページ(短歌):
はとばまで あんずの花が 散つて来て 船といふ船は 白く塗られぬ 斎藤史
「白く塗られた」という意味ですね。
・134ページ(『平家物語』冒頭部分より)
たけき者も遂には滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。
「栄えるものも必ず滅びてしまう」という意味になりますね。
・145ページ(『徒然草』第五十二段「仁和寺にある法師」):
年ごろ思ひつること、果たしはべりぬ。
「長年思っていたことを、成しとげました」という意味になります。
(ivy 松村)