現代の学習塾経営には、さまざまなビジネスモデルがあります。
例えば、補習を中心とする個人塾も数多くあります。
そうした塾は、合格実績に強くとらわれることはありません。
一方で、合格実績の「確保」が生命線となるような塾組織もあります。
元来、学習塾を中心とする教育産業は離職率の高い業界です。
ですから、ノウハウが蓄積しづらいという構造を抱えています。
そんな中で、少子化時代を生き残るために急速な教場展開(教室数を増やす)を戦略とする塾企業もあります。
そのような企業は、人手不足が慢性化します。
そのため、社会人1年目、2年目といった経験の浅い従業員が、すぐさま「主力」となっていきます。
十分な研修も受ける間もないまま、校長、教室長として各「店舗」に配置されるのです。
そこに、アルバイト感覚の大学生講師が加わった布陣が常態となります。
端的にいえば、指導力の低下を粉飾する「看板」として、華々しい合格実績が不可欠となるのです。
つまり、高い合格実績を示し、「各教室」の指導力が優れているという「錯覚」を武器として生徒を集めるスタイルへと行きつくわけです。
高い合格実績を誇る塾には多くの生徒が集まります。
しかし、それにもまして重要なのは、優秀な生徒を獲得できるということです。
それによって、指導力の低い塾であっても、合格実績を「再生産」することが可能となります。
例えば、難関の○○高校を志望する生徒は、○○高校の合格実績の高い塾に通おうとします。
もちろん、生徒の側からみれば、これは合理的な行動です。
実際に通ってみると、受験や教育のことをよく知らない、微妙な講師の授業を受けることになります。
その塾の授業のレベルに疑問を持ちながら、それでも、「ここで勉強していれば○○高校に合格できる!」と信じて通う生徒も多いだろうと思います。
塾業界の内部からみてみると、生徒に○○高校に合格する力をつけさせようとする塾より、○○高校に合格する力を持っている生徒を集めようとする塾の方が目立ちますね。
つまり、「指導力」より「集客力」で勝負をするわけです。
「進学塾」であることを捨て、その方針をよりいっそう徹底させると、さらに窮することになります。
指導力の低下が避けられない組織原理のもとに、合格実績を出し続けるという究極の命題を実現しなければならないからです。
「集客」には、人目を引く「でかい看板」が必要です。
しかし、指導力の乏しい塾に、合格実績を上げることができるでしょうか。
「取るべき行動はひとつですよね?」
上記のような塾は、合格実績という「神話」の力を頼りに、肥大化し、脆弱化する組織を維持しつづけようという、大がかりな仕掛けのビジネスモデルとなってしまっています。
ですから、法的にかなり危うい改竄であっても、手を染めざるを得なくなるのです。
(ivy 松村)