本年度の高校入試では、英語のリスニングテストでトラブルが発生し、当該の2校はリスニングテスト不成立となりました。
そのうちの1校が、小金井北高校です。
小金井北はリスニングのすべてが不成立とされ、受験生全員に一律20点の加点がなされました。
小金井北は都立の上位校ですので、入試結果に影響が生じるかもしれません。
本年度の英語の共通問題は、リスニングの大問1以外では、ほとんど差がつかない内容でした。小金井北を受験する層の生徒が、落とすとすれば、大問4の〔問4〕(1)の解答形式に引っかかるくらいだと思います。
英作文もありますが、英作文の点数を大きく落とすことになるのは、「あること」などをしたときぐらいで、基本的に、英作文では「普通の英文」を書いておけば、大きな点数の差はつきません。
(逆にいえば、「あること」などをしなければ、英作文ではある程度の得点を確保できます。)
今年のリスニングの問題は、得意とするものとそうでないものの間で、12点の差が出るはずの問題でした。
本人が理解しているかどうかはともかく、これで救われた受験生とこれによって形勢が不利になった受験生がいたことでしょう。
さらに、教室によって、聞こえたり聞こえなかったりといった状況の違いがあったようです。リスニングを聞き取ることを止めて、問題を解き進めた生徒は、時間的な有利を手にしたはずです。
こうしたリスニングのトラブルは、近年では26年度、25年度、22年度でも起こっています。しかし、こうした予期せぬハプニングも含めて、「受験」なのだといわなければならないのでしょう。
本年度の入試では、リスニングの難化が進行するなかで、そのリスニングが、小金井北という高得点の競争となる高校の入試で無効となってしまいました。
複雑な思いがします。
英語のリスニングは、本年度の入試の焦点のひとつでした。
英語のリスニングは、共通問題もグループ作成も同じものを使用しますが、実は、昨年から、入試問題の作成者は、意図的にリスニングの難度を高くしようとしているのではないか、と感じていました。
昨年、平成26年度の、リスニング問題である大問1の「問題B」の2問が極端に難化しました。
それで、今後、リスニングの「問題B」を難化させる方針なのか、それとも、正答率を安定させる方向に「修正」するのか、今年度の問題は注目されていたのです。
結論からいえば、「問題B」は今後、難化しそうです。ただし、今年は、昨年度に比べてやや易化しているので、昨年度ほどの難度を継続するのではなく、正答率20~30%くらいの問題を作ろうとしているようです。
教育の現場から「ゆとり」が払拭され、いよいよ入試問題も、「何とか点を取らせてあげよう」というものから、従来の「選抜機能」を果たすものへと、少しずつ変異しているように思えます。
都立高校の入試は、学力を判定する、理解度の差を浮き彫りにする、点数の開きがくっきりとあらわれる、そういう問題構成へと変貌しようとしています。
そのため、これまで、あらゆる学力層を考慮してつくられていたリスニング問題も、やや上位層に合わせた構成になってきています。
リスニング問題はこれまで、特に、都立トップ高を受験する層にとっては、「みんなのボーナスポイント」のようなものでした。
それが、今や、点数を取るものと失うものを峻別する関門となりつつあるのかもしれません。
(ivy 松村)