都立高校の出願のデータをみてみましょう。
まず、近年の出願時の応募倍率で、特徴的な数値を示しているのが、中高一貫校型のグループ作成校の高校です。
白鷗、両国、富士、大泉、武蔵などの中学校併設型の高校は、高校入学の募集人員が少ないため、数値の変動が現れやすくなっています。
倍率の変化が如実に反映されるので、出願の心理や動きが読みやすいデータであるといえます。
これらの学校の中学受検の倍率はすさまじい数値になっていましたが、高校の倍率は相対的に低くなっており、実は、密かに入りやすい「お得な」高校となっています。
中学併設型グループの出願時の倍率
27年度 | 26年度 | 25年度 | 24年度 | ||||
白鷗 | 男 | 2.16 | 1.06 | 1.87 | 2.47 | ||
女 | 1.52 | 1.00 | 1.42 | 2.37 | |||
計 | 1.84 | 1.03 | 1.65 | 2.42 | |||
27年度 | 26年度 | 25年度 | 24年度 | ||||
両国 | 男 | 2.19 | 1.61 | 1.89 | 1.78 | ||
女 | 1.39 | 1.61 | 1.26 | 1.52 | |||
計 | 1.79 | 1.61 | 1.57 | 1.65 | |||
27年度 | 26年度 | 25年度 | 24年度 | ||||
富士 | 男 | 1.94 | 1.19 | 2.10 | 1.90 | ||
女 | 1.55 | 1.94 | 1.48 | 1.75 | |||
計 | 1.74 | 1.56 | 1.79 | 1.83 | |||
27年度 | 26年度 | 25年度 | 24年度 | ||||
大泉 | 男 | 1.48 | 1.68 | 1.87 | 2.40 | ||
女 | 1.68 | 1.06 | 0.58 | 1.76 | |||
計 | 1.58 | 1.37 | 1.23 | 2.10 | |||
27年度 | 26年度 | 25年度 | 24年度 | ||||
武蔵 | 男 | 1.29 | 0.94 | 1.56 | 2.22 | ||
女 | 1.16 | 1.00 | 1.15 | 1.74 | |||
計 | 1.23 | 0.97 | 1.35 | 1.98 |
このグループの特徴は、募集人員が少ないため、少しの人数の変動で、倍率が乱高下してしまうことです。
倍率が高い年度の次の年は倍率が低くなり、倍率が低い年の次の年は倍率が高くなります。
増減の波がはっきりと出やすいので、倍率の推移が予想しやすいグループです。
この傾向は、志願変更にもくっきりと現れます。
26年度の武蔵は、男女ともに「ねらい目」と思われ、志願変更が増加しました。
そのため、最終応募倍率は、男子1.68倍、女子1.23倍となり、やはり男子の応募が急増する結果となりました。
25年度の大泉の女子も0.58倍から、1.10倍と揺り戻しがありました。
しかし、その実数をみてみると、31人の募集に対し、応募が18人あり、志願変更によって、34人に増加したというものです。また、そのうちの32人が合格となっています。
ちなみに、同じ25年度の大泉高校附属中学の女子の倍率は、10.25倍でした。
60人の募集に対し、625人の応募がありました。
あまりにも多くのことを考えさせられるデータですね。
このグループの中で、白鷗、武蔵は26年に、出願時の倍率の極端な低下が起こっています。
この年度から、「自校作成」ではなく、「グループ作成」となりました。
「グループ作成」の導入は、都立高校の序列化を促進しました。
これまでは「自校作成」というブランドでまとめられていた高校間に、くっきりと格付けがなされることになってしまったのです。
つまり、心理的に、それぞれの「グループ」を、高校の評価であるとみなす目線が生まれてしまったのです。
上位グループ :日比谷、西、国立、戸山、八王子東、立川、青山、
中位グループ :新宿、墨田川、国分寺
下位グループ :武蔵、白鷗、両国、富士、大泉
単位制高校(中位グループ)の倍率の推移をみてみましょう。
単位制高校グループの出願時の倍率
27年度 | 26年度 | 25年度 | 24年度 | ||||
新宿 | 2.08 | 2.12 | 2.44 | 2.65 | |||
墨田川 | 1.65 | 1.24 | 1.74 | 1.76 | |||
国分寺 | 1.66 | 1.80 | 2.36 | 2.01 |
いずれも、26年度を境に倍率が下降していることがわかります。
特に、国分寺は志願者離れが加速しています。
国分寺の人気低迷の理由は、「グループ化」以外にさらに二つあります。
ひとつは、「グループ化」の引き金となった、入試問題の流用の発覚です。
25年度の入試のすぐ後に、国分寺高校の国語の入試問題が、独自作成ではなく、過去に使われた大学入試問題をもとに作られたものであったことが明るみになりました。
その後、速やかに、入試問題作成の負担を軽減するために、入試問題の「自校作成」が停止され、「グループ作成」へと移行した経緯があります。
この事件は、国分寺の評判を貶めることとなりました。
また、特別選考枠の廃止も大きな理由です。
国分寺の特別選考は、内申点を加味せず、入試得点のみで合格者を決めるもので、さらに3科を1.5倍で計算するものでした。
要するに、私立型に特化して勉強してきた受験生には有利な受験制度だったのです。
そのために、内申点が乏しいけれども得点力のある受験生の志願先として存在感を示していたのです。
以上のように、国分寺高校は近年、急速に志願者離れが進み、倍率が低下しています。
したがって、この1、2年の間に、これまでになく「入りやすい」状況が生まれています。
国分寺ほどの高校であれば、どの塾であっても、その異変に気付いているでしょう。
志願変更がどうなるのか興味深いですね。
(ivy 松村)