「私立大学の定員の厳格化」について考えてみましょう。
近年、私立大学の「合格難度」が上昇しています。
学生数が「超過」状態にあった大学に対して、「適正な収容力」に見合った「学生数」とするように、文部科学省からの「指示」があったためです。
「定員数」が減らされ、「合格者数」も減少しました。
そのために、「倍率」が高騰し、合否の「ボーダー」が著しく上昇しました。
もうすこし、「ディテール」を見てみましょう。
最難関の国立大学を目指した受験生のうち、少なくない人数が、国立だけでなく早慶などで厳しい結果となってしまいました。
従来であれば、早慶などの合格を得られたはずの「層」が、MARCHの合格のみに留まってしまうわけです。
それで、上位国立大学相当の学力を持った学生が、MARCHに流れます。
一方で、浪人が増えます。
この1、2年、浪人生の数が回復しているといわれています。
そのもっとも大きな理由のひとつは、私立大学の「収容力」が低下してしまったことです。
日本の経済状況がよくなかった時期には、地方の学生の、東京の大学への進学が下火となりました。
東京で「一人暮らし」をするのは、経済的に大きな負担です。
また、同時に、地方では「少子化」が著しく進行しました。
結果として、この15年ほどの間に、東京の大学に在籍する地方出身者の割合は低下しました。
他方、東京やその近県の大学進学者数が増加しました。
「地方からの参戦」が抑制される状況で、私立大学が「キャパ」を大きく超える数の「合格」を出したからです。
近年、都立高校をはじめ、「大学進学実績」を向上させる都内の高校が多く現れましたが、それは、上記のような、都内居住者に有利な「構造」が強化されたことが背景にあるわけです。
今年は、私立大学の合格者が絞られてしまいました。
その「あおり」で、「進学実績」が頭打ちになってしまった高校がありました。
「変化」をつかみ切れず、「合否の可能性」を読み違えてしまった高校も、あったかもしれません。
これから、いくつかの高校は、進学校としての「成長」を鈍化させてしまうかもしれません。
さて、本題の「私立志向」についてです。
私立大学の「難度」が上昇しました。
しかし、「私立大学離れ」は起こらないと思います。
むしろ、私立大学入試が激化するかもしれません。
国立大学と私立大学の両方を受験することは、「勉強量」において、非常に大きな負担になります。
上で述べたように、国立大学志望でありながらMARCHに進学することになる学生がいるわけですが、その中の何人かは、「私立大進学」に絞って受験勉強していれば、早慶の合格を得られた可能性が高かったのだろうと思います。
つまり、「現在の状況」は、ある意味で、国立大学受験の「リスク」がより高まっている、という側面があるわけです。
また、前回の記事でも述べたように、国立大学と私立大学を比べて、国立大学の「アドバンテージ」が、相対的により小さくなっているという見方が強まると、国立大学受験は回避されるでしょう。
「ハイリスク・ハイリターン」ではなく、「ハイリスク・ローリターン」の傾向が強まると捉えられることになるからです。
実際、国公立大学の受験者は、減少傾向にあるといわれています。
今年の「高校入試」でも、私立大学附属校の「倍率」が高騰しました。
また、「中学受験」でも、附属校の人気が再燃しています。
ある意味で、「中学受験」や「高校受験」は、「先物取引」のようなものであるといえます。
早期に、国立大学を回避する方向性が固まったのであれば、「大学受験」のタイミングを待つ必要はないわけです。
ところで、国立大学と私立大学の「差異」の捉え方、というのは、とても難しい問題です。
それだけではなく、「大学」に対する「目線」も、人によって「ばらつき」があります。
「その人」の主観的なものの見方、考え方、見通し、人生観、価値観、教育観、思惑あるいは思想そして経験などが、直接的に反映されてしまうからです。
人の言うことをうのみにせず、自分なりに調べたり、考えたりしましょう。
(もちろん、この記事も、うのみにしないようにしましょう。)
(ivy 松村)
今日の新聞の報道によれば、早慶MARCH、関関同立などの難関私立大学の受験応募者数がかなり減っているそうです。同時に、難関国立大学も、文理を合わせた志願者数が減少しているということです。
したがって、「私立志向」+「安全志向」の傾向が強くなっているようです。
中堅私立大学の受験者数は、大きく増えそうですね。そして、「浪人生」の数も、今後大きく増えそうです。