「共通問題」が導入されて4年が経ち、都立中の入試問題の「方向性」が明らかになってきました。
ちょっと気付いたことを書いてみます。
都立中学の入試の「適性検査Ⅰ」では、いわゆる「作文」が課されます。
過去4年の「適性検査Ⅰ」の「共通問題」は、課題文が2つ用意され、それぞれの文章から1題ずつ記述問題が出されています。さらに、それに加えて「作文」が出題されています。
「共通問題」の体制がスタートし、漸次、「作文」の「構成の統制」が押し進められました。
27年度から、「三段落構成」が「標準」となり、28年度からは、段落の内容に詳細な指示が与えられるようになりました。
それによって、総合的に、より精度の高い学力検査が行えるような「安定的な問題」の作成が「本格化」しました。
各年度の「適性検査Ⅰ」の〔問題3〕を見てみましょう。
共通(小石川・武蔵・富士・大泉)27
〔問題3〕
人が何かを伝え合うときには、どのようなことが重要だと思いますか。 文章1と文章2、それぞれの要点をふまえ、あなたの考えを、三段落構成にまとめ、四百字以上四百四十字以内で書きなさい。
共通(小石川・武蔵・富士・大泉)28
〔問題3〕
あなたにとって「読書が与えてくれるもの」とは何ですか。「文章1」と「文章2」、それぞれの要点にふれ、あなたの考えを四百字以上四百四十字以内で適切にまとめなさい。ただし、次の条件に従いなさい。
条件1 三段落構成にし、第一段落には「文章1」、「文章2」それぞれの要点をまとめること。
条件2 あなたの考えは、一つにしぼって書くこと。
条件3 考えの根拠・理由を書くこと。
共通(小石川・武蔵・富士・大泉)29
〔問題3〕
文章1 と 文章2 それぞれの「自由」についての考え方に共通する内容をまとめた上で、それについてのあなたの考えを四百字以上四百四十字以内で書きなさい。ただし、次の条件に従したがいなさい。
条件1 三段落構成にし、第一段落には、文章1と文章2に共通している考え方を書き、第二段落および第三段落は、内容やまとまりに応じて、自分で構成を考えて書くこと。
条件2 あなたの考えは、一つにしぼり、理由をふくめて書くこと。
共通(小石川・武蔵・富士・大泉)30
〔問題3〕
あなたは、これから学校生活や日常生活の中で、何を大事にし、どのように行動していこうと思いますか。 文章1と文章2、それぞれの内容に関連づけて、四百字以上四百四十字以内で書きなさい。ただし、次の条件にしたがうこと。
条件 次の三段落構成にすること。
① 第一段落で、 文章1と文章2、それぞれの内容にふれること。
② 第二段落には、「①」をふまえ、大事にしたいことを書くこと。
③ 第三段落には、「②」をふまえ、行動を具体的に書くこと。
「共通問題」は、各都立中学校の先生方が共同で取り組まれます。
そのため、いろいろな「知恵」が集積され、出来上がる入試問題は、より合理的で洗練されたものとなります。
いわゆるところの「集合知」、ということができると思います。
さて、共通化以後の都立中の「作文」の骨子となっている「構成の統制」は、ある重要な「ポリシー」を示唆しています。
つまり、紋切り型の「ワンパターンな作文」の放逐です。
受検生に、「決まった型」を使って、毎度毎度「複製」を書き上げるようなやりかたで、「文章」を書く訓練をしてほしくないわけです。
「パターン」に当てはめて「作文」を書きあげるような「準備」を嫌っているわけです。
入試問題と、用意していた「パターン」がかみ合って、たまさか高得点を得る、というような状況を排除したいわけです。
さらにいえば、「体験」をオミットしました。
これも、けっこう重要な「転換」だと思います。
まあ、私がこのように思うのは、私が「そういう作文」を好ましくないと感じているからなのかもしれませんが、しかし、実際、入試問題の「読み取り」をすると「そういう結論」になりそうです。
(ivy 松村)