2.併願優遇
①「確約あり」で「しばりあり」(第一志望がダメなら入学義務)
②「確約あり」で「しばりなし」
③「確約なし」(加点あり)で「しばりあり」(合格し、第一志望がダメなら入学義務)
④「確約なし」(加点あり)で「しばりなし」
私立高校の受験には「併願優遇」という制度があります。この制度が非常にわかりづらいのは、高校によって運用の仕方や中身が違い、場合によって、名称と内容がかけ離れたものになっているからです。
「併願」というのは、「併せて出願する」ということで、第一志望以外の高校を受験することを指しています。
その意味では、ほとんどの受験生は複数の高校を受験するわけですから、「併願」をしているわけです。しかし、「併願優遇」という制度の念頭にあるのは、「その高校以外に進学することを希望している」受験生に、なんとか入学してもらいたいという、高校側の事情です。
逆にいえば、「『おさえ』の高校を確保したうえで第一志望の入試に挑みたい」という受験生のニーズに応える形で生徒を募集しているということにもなります。
具体的には、「基準」以上の受験生に対して、「第一志望がダメだったらうちに来てください」という「しばり」をつけて、「優遇」措置をとるというものです。
この「基準」、「しばり」、「優遇」の内容が各高校で画一ではないのです。それぞれバリエーションがあり、さらに、表面的な内容と、実際の内容に違いがある(裏設定がある)ことがあります。
・「基準」について
「基準」は、9科の内申、5科の内申、3科の内申によるものがあり、どれかを満たしていればいい場合と、複数の基準を満たしていなければならない場合があります。
さらに、漢検、英検、数検などの検定合格が加味されることがあります。その場合も、学校によって、その点数や加点方法が違います。
また、部活動(部長経験)、生徒会活動、特別活動、リーダーとしての実績などが点数として上乗せできる学校もかなりあります。
そして、なによりも知っておかなければならないことは、学校によっては、「入試相談」によって、基準を「考慮」してもらえるということです。
・「優遇」について
「優遇」とは、受験に有利になる措置のことです。その内容は2つあります。「加点」と「確約」です。
「加点」は、入試で得た得点にさらに「優遇」措置としての得点が加算されるものです。
内申点によって、加点の点数が違っている場合もあります。つまり、内申点40以上で+10点、内申点35以上で+5といように。
「確約」は、「よっぽどのことがないかぎり合格できる」と高校側が認めているということです。
通常、「併願優遇」というと「確約」がもらえるということだったのですが、最近は「加点」に切り替える学校も増えてきました。
しかしまた複雑なのは、公式には「加点」措置であるという説明になっていても、実際には「確約」を出す高校もあるということです。
「入試相談」を通して、高校に聞いてみないと、高校側が「合格できると考えているかどうか」は、わかりません。
・「しばり」について
最も一般的な「しばり」のタイプは、「都立校高がダメだったら、うちに来てください」というものです。これはよく、「都立併願」と呼ばれますが、中学校の先生は、都立第一志望の生徒に対して、ほぼ例外なくこれを勧めます。
第一志望が都立ではない受験生には、私立を第一志望とする「併願」を認めている高校もあります。
これらは、いずれにしても、「併願優遇」の高校を「第二志望」に設定することを条件としているわけです。
「優遇」の内容が「確約」の場合には、「第二志望」の高校の合格が確定しているわけですから、後は、第一志望を受けるだけになります。
この場合には、学校の先生は、2校以外の受験は基本的に認めません。過去に「併願校」以外の入学を強行する「約束破り」があったようです。
中には、「自分の学校」を第三志望にしてもよいとしている高校もあります。
そして、「しばり」が全くないのに「優遇」措置を取ってくれる高校もあります。入学義務がないので、さらに別の私立高校の受験が可能になります。
「確約あり」で「しばりなし」の高校があれば、「おさえ」の受験としては理想的です。
高校側は、優秀な生徒に入学してもらいたいと考えているので、内申点などによって、「確約」を出すことがあるのです。
また、ある場合には、ある種の「信頼関係」によって、この形を、高校側が了承してくれることがあります。
あるいは、「しばり」なしで、「加点」を行う高校もあります。
この場合には、法政大学高校のような、内申によって加点が行われる高校の「オープン入試」とあまり変わらないものになります。
いずれにしても、内申の高い受験生が有利になりますから、成績の良い生徒を集めることができます。
もしかすると、「入試相談」で何か話し合いがあるのかもしれません。
わかりやすく整理してみましょう。
「基準」は省きます。
①.「確約あり」で「しばりあり」
②.「確約あり」で「しばりなし」
③.「確約なし」で「しばりあり」(加点あり)
④.「確約なし」で「しばりなし」(加点あり)
①は、最も一般的なもので、典型的な「併願優遇」の形です。
②は、受験生にとって最も「おいしい」形です。デメリットがありません。
③は、「加点」タイプですが、実は「確約」がもらえるという場合もあります。
④は、加点分だけ、入試に有利になるというものです。
(ivy 松村)