中学校の先生は、生徒の「学力」に見合わない高校の受験を勧めることがあるので、注意しなければいけないことがあります。
簡単にいえば、「入りやすい高校」の受験を提案するケースが多いということです。
その理由をまとめてみましょう。
・中学校の先生は、受験生の、入試問題への対応力や得点力を確認したり、指導したりする機会を持っていない
・そのために、合格の可能性をシビアに判断できない
・中学校の先生は立場上、生徒の進路、進学に対して保守的にならざるを得ない
・時間的、労力的な制約のなかで職務を行うため、型にはまった対応になりがちになってしまう
・本気で受験を考えているのかを確認するために、厳しい意見を伝えることがある
以上のような理由が考えられます。
学校とは反対に、塾はなるべく高いレベルの学校に挑戦することを推奨することが多いです。
図式的にとらえると、
・学校は「低いランク」の高校を受けさせようとする
・塾は「高いランク」の高校を受けさせようとする
という構図になります。
端的にいって、中学校は公的な教育機関です。一方、塾は、産業的営利組織です。ですから、一般的な感覚からして、中学校の方が信頼できるはずだという考えを、世間の方々が持たれたとしても無理のないことだと思います。
特に、何らかの理由によって、通っている塾に不信感を抱いている生徒・保護者の方は、塾の受験指導は、生徒のためではなく、塾の都合によって行われているのではないかと考えがちになってしまわれます。そして、それは、あながち間違っていない場合も多くあります。
ここで、一般に広く信じられている塾の「合格実績主義」について考えてみましょう。
塾が、合格者実績を稼ぎ出すために、過度の受験を勧めてくるというものです。
そういった塾も、現実に数多く存在しています。
実際に、都立高校の推薦に受かった生徒に、何とか早慶の附属高を受験させようとしている塾教師を見たことがあります。あるいは逆に、私立の第一志望に受かった生徒に、都立の受験を勧める塾もありました。
そのような姿勢は、合格実績を広告として使いたいという、営利的な目論見によるものです。
または、他塾に負けたくないという、競争意識のあらわれです。
経営的な立場の方が、そのような指示を出したり、自らそのような行動に出たりすることがあるのでしょう。
また、営業的な見地からではなく、ある意味で「純粋に」合格実績を収集したいと考える塾教師もいます。
塾教師という仕事には「職人的」な側面があります。
合格実績は、自らの技能の高さを数値化したものであり、己の価値を示すものであると捉えられています。つまり、合格実績を伸ばすことは、塾教師にとって、栄誉、誇りを手にすることでもあるのです。
そのために、生徒に難関校の受験を後押しする塾講師がいることも事実です。
どちらにしても、これらは塾側の都合によって受験が扱われているものであって、生徒・保護者の方からすれば、受け入れがたいものであると思います。
しかし、塾からの受験校の提案等が、塾の都合によるものなのか、本心から生徒のことを考えてのものなのかは、判別つきがたいことが多いのではないかと思います。
ですから、より良い形で受験に臨むためには、先入観や偏見を排除して、どのような選択がベストなのか、という視点から、受験校を考えていただくほうがいいと思います。
(当然、あまりにも、あからさまな場合には、拒否するべきだと思います。)
大事なのは、塾の動機ではなく、受験生の進路選択にとって有効であるかどうかです。
塾が「高いランク」の高校を勧めてきたとします。もちろん、良くない結果が出るリスクはあります。そして、それは、塾側の都合によって提案されている可能性もあります。
しかし、もし、その高校に大きな魅力を感じ、それがリスクを背負ってでも受験しようと思うほどのものであったとしたら、やはり受験したほうがよいのではないでしょうか。
当たり前ですが、全く可能性のない受験を勧めるような塾教師はいるはずはありません。
可能性があるからこそ、話に上るものだと思います。
何やら、他塾を擁護するような内容になってしまいました。結局は私も塾の人間ということなのかもしれません。
(しかし、ここまで書いた後で、ivyは大丈夫ですよ!といっても、白々しいというか、 欺瞞的な感じがしてしまいますね。う~ん、失敗しました。大人しくまな板の上にのって、判断は、生徒・保護者の方にゆだねることにします。)
ただ、せめて、受験生や保護者の方に忘れないでいただきたいと思うのは、基本的に塾は、「受験を成功させるために動く」ものであるということです。
受験校、受験方法、受験パターンの選定はとても精神的に「しんどい」作業です。
生徒本人の希望や性格、高校から先の進路なども考える必要があります。
当然、高校のスクールカラーや校風、学習指導のありかた、進学実績、費用や通学時間なども考慮しなければなりません。部活や制服などを重視する人もいますが、そのときは、もちろん希望に沿って情報を集めます。
また、入試日程、優遇制度、入試傾向との相性なども押さえなければなりません。
そして何より、生徒の学力=合格可能性と、リスクを踏まえて、最良の受験の形を導き出そうと、絶えず頭をひねっているのです。
私たちは、ただやみくもに、自分たちの利得のみで動いているわけではないことをご理解いただければ幸いです。
(「合格実績主義」に関しては、合格者の「水増し」の問題があります。さまざまな「手口」がありますが、これは詐欺であって、もはや犯罪です。この件に関しては、後日また、書くつもりです。)
(ivy 松村)