当初、このブログには「政治的なこと」を書くつもりはなかったのですが、折に触れていくつかの記事を書きました。「政治」を「タブー」にするほうが、なんというか、不自然だなと、だんだんに思うようになってきたのです。
去年は、まとまった記事を書いてみましたが、それは、ちょっとした「実験」の意味合いもありました。
「政治的な考え」を抑制しながら、「政治的な意見」を書くことができるのかどうか、試してみようと思いました。それが、うまくいったのかどうか、まあ、まだよくわかっていないのですが。
そんなこんなで、今回も、ちょっと「政治的なこと」を書いてみようと思っているのですが、政治の話なので、自分の考えとは違う、と思う人もたくさんいると思います。ですが、まあ、いってみれば、小話の一種のようなものですので、その辺によくいる市井のおっさんの独り言だと思って、気楽に受け流してもらえれば、と思います。
それで、これは常日頃いっていることなのですが、これは正しい、とか、これは間違っているというように「価値観を表明すること」と、なぜそのようなことが起きるのか、とか、なぜそのような結論が導かれるのか、というように「論理的に説明すること」は「次元」が違うわけです。
世の中には、両者の区別がつかない人がたくさんいます。
「政治的なこと」について考えるときには、その2つをよくふまえて熟慮するようにしましょう。
さて、最近の「政治的な状況」をきちんと整理してみようと思ったのが、「きっかけ」です。
「もりかけ問題」が1年以上もくすぶり、さらに、この2か月ほどの間にも、次々と「問題」が発覚しました。
「野党」は、血気にはやり、内閣を追い詰めようと精力的に活動しましたが、いまや完全に「袋小路」の状態になってしまいました。
「野党」の「倒閣運動」がうまくいかない最大の理由は、「世論に訴える」という旧来の方法論が機能しなくなっているからです。
本来、政権にとって、「支持率」の低下は見過ごすことのできない大きな関心事のはずです。
放っておけば、「選挙」に勝てなくなるからです。
そのため、従来は、内閣の「支持率」が下がってくると、与党内からも「突き上げ」が起こりました。
党内外、そしてマスコミからの「首相下ろし」の圧力が強まって、政権の維持が現実的ではなくなると、次の選挙に臨む前に、その内閣は「末期」を迎えました。
過去のこのような政治のメカニズムは、もはや前時代的なものになりつつあります。
現政権にとって、マスコミが示す「世論」は「弱み」ではなくなっているからです。
安倍政権が、「支持率」の低下に大きく動揺しない理由はおもに2つあります。
ひとつは、「世論調査」の信憑性がゆらいでいることです。
アンケート調査は、質問文の書き方や質問の順序を調整したり、回答者を選別したりすることによって、「結果」をある程度コントロールすることができます。
具体的には、アンケートの対象を「固定電話」の所有者に限定する場合、回答者の「属性」に偏りが生じます。平均年齢が高くなるわけです。
近年は、新聞各紙あるいは各テレビ局がどのような「政治色」を持っているのか、一般にもよく知られるようになってきました。
そのうえで、各報道機関の「世論調査」が、その報道機関の主張にとって都合の良い数字になることも広く知られるようになってきました。
たとえば、現政権を支持する論調の新聞の「内閣支持率」は高めに出て、反対に現政権に批判的な論調の新聞の「内閣支持率」は低めに出るわけです。
結果的に、現代は、政治に関心を持っている人ほど、「内閣支持率」を「あて」にしなくなっています。
インターネットの台頭によって現出した「情報社会」は、「マスコミ」の影響力の崩落をもたらしました。
「マスコミ」の「主観性」が広く浸透し、その「誤謬性」を誰もが疑うようになったわけです。
そのため、「内閣支持率」の下落傾向が強くなっても、「世間」の反応は鈍いし、政権も慌てふためいたりはしないわけです。
もうひとつの理由はもっと単純です。
「支持率」が低下しても「選挙」に勝てるという目算があるからです。
端的に、一連の「倒閣運動」でより大きなダメージを負ったのは、「野党」のほうでした。
「内閣支持率」は下降しましたが、「与党支持率」とその他の政党の「支持率」は、依然大きく広がったままです。
「支持政党なし」の割合が大きくなっていますが、現状では、選挙になった場合「無党派層」は「与党」に傾くので、「野党」は全体の勢力をさらに縮小させることになるでしょう。
これまで、「支持率」という数字に大きな関心が寄せられていたのは、それが「選挙」を占うものだと考えられていたからです。
また、それが「選挙」に影響を与えるものだと考えられていたからです。
安倍さんは、自民党の総裁になって以降、国政選挙にすべて勝っています。
「支持率」が低くても、「選挙」で勝てるのであれば、「支持率」を気にする必要はないわけです。
海外の選挙でも似たような傾向が出始めていますが、現代は、「支持率」と「選挙」がリンクしない時代となりつつあります。
もう少し踏み込んでいえば、マスコミ報道をとおして「危機感」や「終末感」を煽るというような「手法」は、もはや効果的ではなくなっているのです。
反面、テレビや新聞のみを情報源としている人は、注意が必要かもしれません。
「報道とは違う現実」と直面して、戸惑うことになります。
たとえば、これだけの騒ぎを起こしておいて、なぜ内閣は平気でいるのだ、と不思議に思う人もいるでしょう。
(ivy 松村)