私は、高校の大学合格実績を調べるのに、高校のホームページから資料を入手しています。
また、毎日新聞出版が毎年発行しているサンデー毎日特別増刊の「高校の実力」という冊子を参考にしています。
「高校の実力」は、調査会社が取材したデータをもとに、全国の進学校の「大学合格者数」を掲載しています。
書かれてある「説明」によれば、ほとんどの私立大学は「高校別合格者数」を公表しているのだそうです。
一方、国公立大学は、その多くが「高校別合格者数」を公表していません。
「高校別合格者数」を公表していない国公立大学の合格者数の調査は、各高校に対して実施したアンケート調査をもとにしているということです。
したがって、基本的には、多くの国公立大学の合格者数は、各高校がホームページで告知している合格者数と変わらないものになります。
しかし、比較してみると、合格人数が違うこともあります。
もちろん、なにかしらの「ミス」の可能性がありますが、そうではない場合には、合格人数に「変化」があったために、高校が合格者数を「更新」したのだということになります。
そのほとんどは、人数が増えているケースです。
おそらく、アンケート調査の後に、合格の報告があり、判明した合格者を加算したのだろうと考えられます。
また、ごくまれに合格人数が減っていることもあります。
高校が、雑誌のアンケートに答えた後に、自校の合格者数を減らしたのだとすれば、それは、ちょっと「イレギュラー」であるように思います。
さて、「高校の実力」によれば、以下の国公大学などが「高校別合格者数」を公表しているとされています。
・岡山大学
・金沢大学
・京都工芸繊維大学
・千葉大学
・筑波大学
・東京農工大学
・鳥取大学
・広島大学
・横浜国立大学
上記以外の公立大学では、大阪市立大、大阪府立大、首都大学東京などが「高校別合格者数」を公表しているそうです。
「高校の実力」では、これらの大学の合格者については、大学から直接データを入手し、それをもとに合格者数を記載しているということです。
以下のように考えることができます。
・「高校別合格者数」を公表していない大学の合格者数については、高校がリリースしている資料のほうが「信頼性」が高い
・「高校別合格者数」を公表している大学の合格者数は、「週刊誌の情報」のほうが「信頼性」が高い
また、次のような「興味」をかきたてられました。
果たして、高校は、どこまで正確に合格者数を把握できているのだろうか。
大学が、本当に、合格者の出身高校の正確な情報を流しているのであれば、少なくとも当該の大学の合格者数について「実数」が明らかとなるわけです。
一方、高校がリリースしている合格者数は、基本的に、受験生の「報告」もとに作成されています。
(私立大学などの合格者数を確認するのに「週刊誌の情報」を取り入れる高校もありますが。)
都立高校のホームページには、まだ「報告」に来ていない卒業生に向けて、連絡をよこすように呼びかけているものも見られます。
つまり、高校が把握できていない「受験結果」があるわけです。
両者を照らし合わせることで、「受験結果の回収」の実像が、わずかばかりでも垣間見えるのではないかと考えたわけです。
そこで、上記の大学のうち、千葉大、筑波大、横国大の3大学の合格者数について、都内のいくつかの高校をピックアップして、チェックしてみました。
もちろん、同じ数の合格者数の高校もありましたが、合格者数が違う高校も多くありました。
調べた高校のうち、3分の1ほどの高校で、合格者数に違いが見られました。
また、興味深いことに、高校が公表している合格者数のほうが多かったのです。
筑波大学 |
千葉大学 |
横浜国立大学 |
||||||
週刊誌
合格者 |
高校
合格者 |
週刊誌
合格者 |
高校
合格者 |
週刊誌
合格者 |
高校
合格者 |
計 | ||
西 | 5 | 3 | -2 | |||||
駒場東邦 | 4 | 3 | 9 | 8 | -2 | |||
学芸大附属 | 6 | 5 | -1 | |||||
小松川 | 6 | 5 | -1 | |||||
豊島岡 | 8 | 7 | -1 | |||||
本郷 | 9 | 8 | -1 | |||||
城東 | 4 | 5 | 1 | 0 | 0 | |||
筑波大附駒場 | 4 | 5 | +1 | |||||
青山 | 2 | 3 | +1 | |||||
国立 | 10 | 11 | +1 | |||||
九段 | 1 | 2 | +1 | |||||
駒場 | 7 | 8 | +1 | |||||
八王子東 | 10 | 11 | +1 | |||||
都立武蔵 | 0 | 1 | +1 | |||||
麻布 | 13 | 14 | +1 | |||||
國學院久我山 | 2 | 3 | +1 | |||||
国分寺 | 3 | 4 | 4 | 5 | +2 | |||
日比谷 | 8 | 9 | 3 | 4 | +2 | |||
吉祥女子 | 12 | 13 | +2 | |||||
錦城 | 4 | 5 | 3 | 4 | +2 | |||
戸山 | 15 | 16 | 8 | 10 | +3 | |||
小山台 | 6 | 8 | 6 | 7 | +3 |
このような数値の「不同一」が起こる原因は、限られています。
「大学の情報」が正確でないか、「週刊誌の情報」が正確でないか、または、「高校の情報」が正確でないか、です。
あるいは不正確な情報が複合しているのかもしれません。
もちろん、何が間違っているのかは、「だれにも」わからないことですが。
私も、度々「入力ミス」などをしてしまう人間なので、その「差異」は単なる「何かの間違い」である可能性を常に考えます。
しかし、「週刊誌」の合格者数を一応「現実のもの」と仮定して読み解くのであれば、「高校側が集めた情報」か「高校が公表している情報」のどちらか、またはどちらもが正確ではないのだということになります。
合格者数が少なくなるケースは、容易に想像が可能です。
その場合は、高校に「合格」を報告していない合格者がいるわけです。
一方、合格者数が増えているケースです。
その場合は、合格していないのに「合格」の報告をしているものがいるということになります。
考えてみれば、「虚偽の合格報告」の可能性はあります。
これは、広く一般にあり得る「可能性」について検討するものですが、合格しても行くつもりはないけど、一応、「後期試験」を受けました、と。で、合格したけれど、浪人するつもりです、と。
実際には、不合格だったけれど、体面を保つために「そういう報告」をするような人間は、世の中に、思いの他存在するのではないかというような気がします。
あるいは、他にも、いくつかの理由が思いつきますが。
それにしても、情報の「信頼性」は大きく揺らぎます。
けっこうあれこれ考えましたが、結局、「それ以外」のほとんどの国公立大学については、週刊誌も「高校の情報」に依存しているわけです。
結果としては、いろいろなものを飲み込んで、高校がリリースしている合格者数に依拠して、分析や考察をしてみようということにしました。
「情報源」が同一であるほうが、いくぶん、気分的に許容できるような気がしたわけです。
(ivy 松村)